国税庁は、2022事務年度(2022年7月から2023年6月までの1年間)における相互協議の状況を公表しました。
それによりますと、2022事務年度は前事務年度を55件(22.4%)上回る過去最多の301件の相互協議事案が発生し、そのうち「事前確認」に係るものは243件(前事務年度比29.3%増)となり、全体の81%を占めました。
上記の相互協議とは、納税者が移転価格課税等による国際的な二重課税を受けた場合、または受けるに至ると認められる場合に、国税庁と条約締結国の税務当局間で解決を図るための協議手続きをいいます。
また、事前確認とは、納税者が税務当局に事前に申し出た独立企業間価格の算定方法を税務当局が確認した場合には移転価格課税は行わない制度をいい、「移転価格課税その他」に係るものは58件あり、全体の19%を占めました。
なお、「移転価格課税その他」には、移転価格課税に加えて、恒久的施設(PE)に関する事案や源泉所得税に関する事案などが含まれます。
一方、同事務年度の処理件数は191件あり、前事務年度からは5件(3%)増加し、このうち「事前確認」に係るものの処理件数は146件、「移転価格課税その他」に係るものの処理件数は45件あり、処理事案1件当たりに要した平均的な期間は30.2ヵ月(前事務年度31.6ヵ月)となりました。
処理件数を業種別にみてみますと、「製造業」が124件で最多、次いで「卸売・小売業」44件、「その他」23件となりました。
また、対象取引別にみてみますと、「棚卸取引」が145件で最多、次いで「役務提供取引」111件、「無形資産取引」69件となりました。
2022事務年度の相互協議事案の処理件数は191件となった一方で、発生件数は301件と処理件数を上回ったことから、翌事務年度への繰越件数は前事務年度比17.4%増の742件に増加しております。
国税庁では、納税者の予測可能性を高め、移転価格税制の適正・円滑な執行を図る観点から、事前確認に係る相互協議にも力を入れており、今後の動向に注目です。
(注意)
上記の記載内容は、令和6年2月5日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。