エヌピー通信社:租特にメスは入るのか

 特定の企業や個人の税負担を特例として軽くする租税特別措置、通称「租特」と呼ばれる制度の問題点が指摘されています。租特による企業分の税負担軽減規模は2021年度で1.9兆円に上るなかで、その効果の検証ができていないことが問題視されてきました。政府は防衛費増額の財源確保のために27年度までの増税を決めていますが、「増税の前に租特の見直しを」といった意見も出ています。

 租特は企業を対象にしたもののほか、「住宅ローン減税」など個人を対象にしたものも合わせて300種類以上あります。法人税関連の税負担軽減は例年2兆円前後で、その3分の1を占めているのが、研究開発投資をした企業の法人税額から研究費の一定割合を控除する「研究開発税制」。研究開発税制などの租特は、政策目標を達成する手段として時限的に認められている特例措置です。しかし、政府の統計によると、国内企業の研究開発費は増えているものの国内総生産(GDP)比で見るとほぼ横ばいで推移。主要企業の売上高に対する研究開発費の比率も横ばいで、明確な拡充効果は読み取れません。こうした租特が効果を発揮しているのかどうか、検証はほとんどできていないというわけです。

 その研究開発税制も23年度税制改正で期限の延長が決まりました。3月下旬の参院予算委員会で野党議員から研究開発税制の効果について質疑が出ると、鈴木俊一財務相は「一定程度(研究開発投資に)寄与したものと考えている」と述べたものの、具体的な効果については「その効果を定量的に申し上げることは困難」として評価を避けました。ある財務省幹部は「防衛費の財源確保のために租特をいじるには関係団体が多すぎて時間が足りない」と話し、実際には抜本的な見直し機運にはつながっていないのが現実のようです。
<情報提供:エヌピー通信社>