2022年分の所得税の確定申告期が終わりました。電子申告システム「e-Tax」を使った手続きなど手軽に申告できるようになりましたが、就業者のうち確定申告をしている人は4割に満たないのが現状です。会社員の給料から所得税を天引きする「源泉徴収制度」があるため、給与所得以外の収入がない勤め人は、基本的に申告義務はないためです。サラリーマンからすると一見「お手軽」に見える制度ですが、この制度が「納税者意識を低くしている」といった指摘もあります。
源泉徴収制度は、1940年に当時日本の同盟国だったナチス・ドイツの制度を参考に導入されました。安定して確実に税収を確保できるため戦費調達に効率的だったことが理由とされます。
現行制度では、給与所得の納税義務者は給料をもらう個人ではなく、給与を支払う会社になります。会社は毎月、従業員の給与から源泉徴収し、控除などを考慮した上での過不足分を年末調整します。徴税コストが削減するといったメリットもありますが、一方で企業側の負担は大きくなっています。また確定申告をしない個人にとっては、天引きによって自らが納税していると意識する機会が減り、先述の通り納税者としての意識を薄めているといった批判が識者や税理士業界などから出ています。
東京都が2016年に都民を対象に実施した調査では、44%の人が税に関する知識は「あまりない」「全くない」と回答しました。一方で、4割近くが税に対する印象を「強制的なもの」と回答しています。ある経済官庁幹部は、「税金を年貢のように『お上』から徴収されているという意識がまだあるのではないか。だから税を財源とする公共サービスも『上』から振ってくる感覚でいる日本人も多いように感じるが、本来は税と公共サービスは対価として考えるべきだ」と話します。
<情報提供:エヌピー通信社>