国税庁がまとめた「国外財産調書」のデータによると、2020年12月31日時点で富裕層が海外に持つ資産の総額は約4.1兆円でした。同調書の提出件数は年々増加しているものの、財産を持っているにもかかわらず調書を出していない人も相当数いるとみられ、当局は文書照会などで適正な提出を確保していくとしています。
国外財産調書は、富裕層の持つ海外資産の把握と適正な課税を目的として、合計5千万円超の資産を海外に有している人に提出が義務付けられています。国税庁が2月に発表した2020年分の提出状況によると、調書の提出件数は1万1,331件で、総財産額は4兆1,465億円でした。件数では前年より679件増加し、価額では1,089億円減少しています。同制度は13年にスタートし、15年1月から正当な理由のない未提出、虚偽記載に対する罰則規定を導入。提出件数は制度開始以来、微増傾向を続けています。
国税局の管轄ごとに見ると、東京が7,216件で全体の63.7%を占めています。以下、大阪1,663件、名古屋815件と続きました。また財産額では、東京3兆161億円で全体の72.7%を占めました。富裕層の持つ資産の約4分の3が東京に集中している現状が浮き彫りとなっています。大阪は5,737億円、名古屋は1,906億円でした。
財産の構成比では有価証券が全体の51.2%と過半数を占め、以下、預貯金、建物、貸付金、土地の順で割合が高くなっています。
同調書は、正当な理由なく期限内に提出がなかったり虚偽の記載があったりしたときには1年以下の懲役か50万円以下の罰金が課され、未提出であったり記載のない財産について申告漏れがあったりしたときには加算税に5%のペナルティーが上乗せされることとなっています。同時に、記載のあった財産に申告漏れがあったときには加算税を5%軽減するインセンティブも設けられています。
<情報提供:エヌピー通信社>