エヌピー通信社:生産緑地問題、宅地流入は2割

 都市部の農地への税優遇が期限切れを迎えることで生じる「2022年問題」について、生産緑地指定を解除する土地は2割程度にとどまる見通しです。

 都市の農地のなかでも市街化区域にある一定規模以上の土地は、農業を続けることを前提に、「生産緑地」として30年間、固定資産税や相続税の納税が猶予されます。現在、生産緑地は全国に約1万3千ヘクタールあり、このうち制度がスタートした1992年に指定を受けた土地が約8割を占めます。つまり約1万ヘクタールの都市部の農地は2022年に期限切れを迎えるため、土地オーナーは生産緑地の指定を引き続き受けるか、はたまた宅地などに転用するため指定解除を受けるかの決断を迫られていました。

 オーナーを悩ませるのは、生産緑地指定を受けると税優遇を受けられる反面、原則として農作物の生産以外の用途で土地を使うことはできず、売却も禁じられている点。そのため期限が切れる22年に多くの都市農家が制約を嫌って指定解除に踏み切り、それらが一斉に不動産市場に流れ込む可能性がかねてより指摘されてきました。それによる不動産価格の下落リスクが「2022年問題」と呼ばれるものです。

 しかし日本経済新聞の調査によれば、期限切れを迎える生産緑地について昨年11月末時点で、「生産緑地指定を延長する」と答えた割合は首都圏の20市区で85%(面積ベース)でした。

 当初懸念されていたほどの宅地流入が起きなかった理由としては、近年に成立した新たなルールがあります。生産緑地の指定期間が30年から10年に短縮されたほか、それまで農業に必要な施設しか建てられなかったところを直売所や農家レストランの設置が認められました。さらに他の農家や市民農園を経営する企業に直接貸し出すことが可能となり、必ずしも自身が営農する必要がなくなりました。こうしたルールが整備されたことで、多くのオーナーが「10年延長」を選択する結果となったようです。

 もっとも8割が生産緑地を延長するとはいえ、残りの2割に当たる約2千ヘクタールが宅地化する可能性があります。そうなれば周辺のアパートの家賃相場や受給バランスに影響を与えることを踏まえ、不動産の活用法を改めて見直す必要が出てきそうです。
<情報提供:エヌピー通信社>