政府は、現在200ある国の基金事業を総点検し、使う見通しがないと判断した5,466億円を国庫に返納させることを決めました。すでに事業を終了し、管理費だけの支出が続く基金は廃止します。存続する基金についても、全事業に成果目標を定めさせてルールを厳格化。デジタル行財政改革会議で、国の基金事業(152基金、200事業)の点検結果を河野太郎行政改革担当相が報告しました。
基金は新型コロナ対策などで膨張。2023年3月末時点で計16.6兆円の残高があります。返納させるのは、業績が悪化した中小企業に融資する「新型コロナウイルス感染症基金」や、ワクチン開発や国内流通を促す「ワクチン生産体制等緊急整備基金」など。23年度分の約4,342億円、24年度分の約1,124億円を使う見込みがない資金と判断し、国庫に返納させます。
総点検では、事業自体が終わった後も基金を運営・管理する独立行政法人や公益法人の事務費や人件費などの支出だけが続いている〝無駄遣い〟が見受けられました。「省エネルギー設備導入促進基金」の電気自動車充電設備の設置を進める事業や、「地域還元型再生可能エネルギーモデル早期確立基金」を使った事業など、15事業を廃止します。
基金はこれまで数値目標がなく、成果の検証が困難でした。今後は全ての基金事業について定量的な目標を設定し、成果検証を踏まえて存続の必要があるかを判断します。
政府の予算は年度ごとに執行し、使い切るのが原則。ですが、それだと将来にわたる必要額を見計らうことが困難な事業に予算を付けにくいのが現状です。そのため単年度の予算措置が難しい事業については基金を設立し、長期にわたって資金を積み立てています。
08年のリーマン・ショック後の経済対策などで徐々に活用が始まったものの、規模はさほど大きくなく19年までは2兆円台の残高で推移してきました。新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した20年度には新たな基金が乱立し、残高は16.6兆円まで膨張しました。毎年の補正予算編成のたびに水ぶくれし、使い道が不明瞭かつ設定後の管理がおろそかであるなど、多くの問題が指摘されていました。
<情報提供:エヌピー通信社>