どの国にどれだけ法人税を納めたかを示す「国別納税額」を自発的に公表する企業が各国で増えています。企業による租税回避が世界的な問題となるなかで、自社の価値を高めるための行動として評価されているためです。国によっては法制度化も進みつつあるなか、将来的に日本での導入はあるのでしょうか。
国別納税額の公表は、もともと欧州で始まった動き。多国籍企業による税逃れの実態が明らかになるに伴い、企業の納税状況への消費者や投資家の目が厳しくなったことを受けて、企業が自主的に納税額を公開する動きがここ10年ほどで生まれました。現在では多くの企業が、グループが活動する各国での詳しい納税情報を明かしています。
日本でもESG(環境・社会・企業統治)活動の一環として納税情報を明かす企業は増えつつあり、現在ではTOPIX100社のうち32社と約3分の1を占めます。
さらに先行する欧州では、租税回避防止への取り組みとして、国別納税額の公表を制度化する動きも進みます。EU(欧州連合)は2021年末に、EU内で事業を営む大企業に納税額の公表を義務付けるルール導入を決めました。企業の納税状況の透明化を求める声は世界的に根強く、今後もこうした動きは加速していくとみられます。
ただ日本はといえば、こうした流れには慎重な姿勢がみられるようです。昨年の国会では、国別納税額の開示の法制化について鈴木俊一財務相が、「国別報告制度は当局の守秘義務が前提で、公表を競争上の不利益と考える企業もある」と答え、消極的な姿勢を示した場面がありました。個別企業の名前を出さずに一定規模以上を集計して公表する案についても、「個社の名前を出さないことを前提に、統計的にどのようなニーズがあるか、諸外国はどうしているかなど、慎重に検討する必要がある」(国税庁)と答弁するにとどまっていて、議論が進んでいないのが現状です。
<情報提供:エヌピー通信社>