査察(いわゆるマルサ)は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的とし、犯罪捜査に準じた方法で行われる特別な調査をいいます。
その調査にあたる国税査察官には、裁判官の発する許可状を受けて事務所などの捜査をしたり、帳簿などの証拠物件を差し押さえたりする強制捜査を行う権限が与えられます。
この査察調査は、単に免れた税金や重加算税などを納めさせるだけでなく、検察への告発を通じて刑罰を科すことも目的としております。
刑罰とは懲役や罰金ですが、以前は、実刑判決はなく、執行猶予と罰金刑で済んでいましたが、懲りない面々に対して、1980年に初めて実刑判決が出されて以降は、毎年実刑判決が言い渡されております。
2021年度査察白書によりますと、同年度中に一審判決が言い渡された117件の全て(100.0%)に有罪判決が出され、うち5人に対し実刑判決が言い渡されております。
実刑判決で最も重いものは、査察事件単独に係るものが懲役2年、他の犯罪と併合されたものが懲役9年となりました。
例えば、A社は、国内の金地金取扱業者に金地金を販売していましたが、虚偽の請求書を作成するなど、香港法人に対する輸出販売を装い、架空の免税売上を計上する方法により、不正に消費税の還付を受け、または免れており、同社の代表者は、消費税法及び地方税法違反の罪で、懲役1年8月の実刑判決を受けております。
一審判決があった117件の1件あたり平均の犯則税額は6,400万円、懲役月数は15.7ヵ月、罰金額は1,500万円でした。
査察の対象選定は、脱税額1億円が目安といわれ、脱税額や悪質度合いの大きさが実刑判決につながります。
査察で告発されますと、社会的信用を失うだけでなく、巨額な罰金刑や実刑判決の可能性もあります。
なお、刑罰は10年以下の懲役、罰金は1,000万円(脱税額が1,000万円を超える場合は、脱税相当額)以下となっております。
(注意)
上記の記載内容は、令和4年8月8日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。