来年10月に本格導入される消費税のインボイス制度について、日本税理士会連合会(神津信一会長)はこのほど、円滑な導入・実施に向けた提言をまとめました。導入自体は許容する一方で、免税事業者保護のために講じられた経過措置の当面の維持や、請求書の保存要件の緩和を求めました。日税連は一貫してインボイス制度に反対の立場を取っていますが、導入までの時間が迫るなかで、事業者への影響を軽減する妥協点を模索する動きといえそうです。
日税連の提言では、①インボイス導入から3年間設けられる経過措置を当面維持すること、②請求書なしの帳簿保存のみで税額控除をみとめること――の2点を求めています。
インボイス制度のもとでは消費税課税事業者しかインボイスを発行できず、インボイスがなければ仕入税額控除ができないため、インボイスを発行できない免税事業者が取引から排除される可能性が高いとされています。そのため政府は、来年10月から3年間は免税事業者が相手の取引でも8割、さらに3年間は5割、仕入税額控除を認める経過措置を設けています。①の要望ではこれについて、「免税事業者が市場取引から排除されることを防止するため、(8割控除の)経過措置を当分の間維持すること」を提言しました。
また②では、インボイス制度下では事業規模にかかわらず請求書と帳簿の両方を保存しなければ仕入税額控除ができないとされているところを、事業者によっては保存できないことが税法で定める「やむを得ない事情」に当たるとして、帳簿のみの保存で足りるよう扱うべきとしました。
日税連はこれまで、税理士の専門団体として、インボイス制度に対しては一貫して慎重な立場を取り続けています。年に一度まとめる税制改正の建議書でもたびたび見直しを求めていて、例えば20年度建議書では、インボイス制度が事業者だけでなく「税務官公署にも多大な事務負担を課す」とした上で、「現行の請求書に一定の記載事項を追加するだけで区分経理は十分可能」だとインボイス方式の必要性を根本から否定しています。併せて当時から免税事業者が被るリスクに言及し、「適格請求書等を発行できないことに伴い、不当な値下げ等により経営状態が圧迫されることのないよう対策を講じなければならない」と抜本的な対応を求めていました。
<情報提供:エヌピー通信社>