エヌピー通信社:政府税調、新興企業支援税制を求める声

 政府税制調査会(首相の諮問機関)の総会が4月上旬に開催され、企業の投資を促す税制のあり方について議論が行われました。出席した委員からはスタートアップ(新興企業)を支援する税制の必要性を指摘する声が上がっています。

 この日の総会は「デジタル化が社会に与える影響」をテーマに行われ、行政のデータ活用や企業のデジタル化、AIに詳しい大学教授3人からのヒアリングの後、委員間で意見交換が行われました。委員からは既存の投資減税だけではなく、欧米に比べ低調なスタートアップの設立を後押しする税制の必要性を指摘する声が上がりました。これまでの研究開発税制などは企業の法人税負担率を実質的に引き下げてきたものの、その分が成長につながる投資や従業員の賃上げに回されておらず、経済成長や分配につながっていないという課題も指摘されています。

 政府税調は与党の税制調査会とは別に設けられており、有識者が中長期的な税制の課題を議論しています。岸田文雄政権は昨年11月、自らが提唱する「新しい資本主義」の実現に向け、必要な税制のあり方を議論するよう求めました。政府税調は2023年1月までに「中期答申」を取りまとめ、政府に提言することを目指しています。

 コロナ禍では貧富の格差が拡大し、富裕層や大企業優遇を見直し「分配」につなげていく姿勢が税制にも求められています。二酸化炭素排出量に応じて企業などに課税する炭素税の導入や、株式譲渡益などにかかる金融所得課税の強化など、増税も含めたあり方の議論も必要となります。しかし第2次安倍政権以降、首相官邸や与党の意向を前に政府税調の踏み込み不足が目立つ状況です。夏の参院選を前に政府・与党は負担増につながるような議論を避けていて、政府税調がどこまで突っ込んだ議論ができるかが注目されます。
<情報提供:エヌピー通信社>