エヌピー通信社:馬券訴訟、高裁で納税者が逆転敗訴

 馬券の払戻金の所得区分を巡る争いで東京高等裁判所は11月、「雑所得」として経費に算入できるとした一審の判決を取り消し、国が主張していた「一時所得」に該当するとの判断を下しました。一時所得では外れ馬券の購入費は経費として控除できず、当たり馬券の払戻金のほぼ全額が課税対象となります。

 今回の裁判で東京高裁は、払戻金が雑所得に該当するには「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」であるべきとの最高裁判例を前提に、納税者が馬券を購入するにあたって継続性や営利性があるか否かで判断するべきとしました。そこから今回の裁判事例では馬券購入に回収率が100%を超えることが期待できるような独自のノウハウは認められず、ある程度の期間にわたって継続して利益が上がると客観的には言えないことから、国の主張する一時所得に当たると結論付けました。

 競馬を含むギャンブルの配当金は従来、一時所得として処理するのが通例でしたが、2015年に大阪府の男性が起こした裁判で納税者が勝訴したことで流れが変わりました。争いが最高裁までもつれた結果、「偶発性に左右される一般の馬券購入と異なり、ソフトを使用して継続的に馬券を購入することによって個別のレースの当たり外れの偶然性を抑えている」として、払戻金は雑所得と認定されています。

 その後、自動購入ソフトを使わずレースごとに結果を予想していた別の男性も最高裁で雑所得認定を勝ち取り、国税庁は新たな通達を提示。網羅性や金額の規模性、継続性、営利性などをすべて備えていれば、自動購入ソフトを利用していなくても、外れ馬券を経費にできることとなりました。ただ、その判断で納税者と税務署の見解が異なることも多く、いまだにトラブルは続いている状況です。
<情報提供:エヌピー通信社>