エヌピー通信社:国税が海外口座情報を年間191万件入手

 国税庁が海外の税務当局と金融口座情報を交換するCRS(共通報告基準)で、2020事務年度(20年7月~21年6月)の間に87カ国・地域から邦人の口座情報を、約191万件を入手したことが明らかとなりました。CRSによる情報交換の対象となる口座は前事務年度から残高要件が引き下げられていて、交換件数はそれまでの約3倍に跳ね上がっています。任意の要請などによる情報交換件数が減る一方で、自動的に各種情報を交換する件数は増加傾向にあり、最低限のコストで富裕層の海外資産を捕捉する仕組みがいよいよ完成しつつあります。

 18年に日本が参加したCRSは、国内の金融機関に開設された相手国居住者の口座情報を、年に一回、自動的に交換するという仕組み。例えば日本の銀行に口座を開設した非居住者の情報について国税庁がその国に提供し、逆に日本人が海外に開設した銀行口座の情報が、その国から国税庁に送られてくることになります。

 今回発表された20事務年度のデータでは、日本の居住者が海外に持つ金融口座情報を87の国・地域から190万6,896件入手しました。前年から相手国・地域が1増えています。

 国税庁がまとめた20事務年度の相続税の税務調査実績によれば、海外資産への調査は1年間で551件行われ、34億円の申告漏れが見つかりました。コロナ禍で調査件数は半減したものの、1件当たりの申告漏れ価格では3割減と、1件当たりの「取れ高」を重視した調査を行ったことが分かります。

 また同事務年度の所得税調査でも、海外投資などを行っている個人への実地調査はほぼ半減したものの、海外投資に関する富裕層1人当たりの追徴税額は所得税調査全体の1人当たりに比べて3.2倍となっています。人員削減やコロナ禍による活動制限のなかで、国税当局が海外資産を狙い撃ちにしている状況が浮き彫りとなっています。
<情報提供:エヌピー通信社>