エヌピー通信社:ストックオプション利益、課税漏れの可能性

 会計検査院はこのほど、ストックオプションの権利行使で得た利益を申告していない疑いがある納税者の情報が、国税当局内で十分に共有されておらず、2年間に合計150人が得た約60億3,400万円の利益に対して課税漏れがあった可能性が高いと指摘しました。

 譲渡制限が付されて無償付与されるストックオプションを「譲渡制限付無償ストックオプション」といいます。権利が付与された時点では所得として認識されず、定められた価額で株式を取得(権利行使)した時点で「経済的利益の額」が確定します。権利行使時の株式価額と取得価額との差額が所得税の課税対象となります。

 譲渡制限付無償ストックオプションのうち、租税特別措置法に規定する要件を満たすものは「税制適格ストックオプション」、それ以外のものは「税制非適格ストックオプション」とされます。「適格」は権利行使時に課税されず、株式の譲渡時に「譲渡対価の額から取得価額、支払手数料などを差し引いた額」が課税所得となります。「適格」について権利行使や譲渡が生じた場合には証券会社が「特定株式等の異動状況に関する調書」を、「非適格」の権利行使があった場合には権利を付与した会社が「新株予約権の行使に関する調書」を税務署長へ提出します。

 調書はデータ化されて国税総合管理システム(KSKシステム)に取り込まれるため、国税局・税務署は記載内容を確認できます。また、国税庁ではKSKシステムによって無申告が想定される納税義務者を抽出し、譲渡所得の見込み額を記載した「対象者リスト」を作成して国税局・税務署へ情報提供することとしています。

 会計検査院が「対象者リスト」に記載されている延べ1,064人を調査したところ、「適格」での無申告が想定される納税義務者のうち73人(譲渡対価額合計13億965万円)については「税務署への情報提供」が行われていなかったほか、43人(同5億7,130万円)については「税務署での処理方針」が定められていませんでした。

 また、「非適格」での権利行使時に得た利益を、給与収入などとして適正に計上していない可能性が高い納税義務者34人(経済的利益の額合計41億5,321万円)については「税務署が状況を把握しておらず適切な申告確認や接触」が実施されないままとなっていました。
<情報提供:エヌピー通信社>