米バイデン政権のイエレン財務長官が、就任後初めての主要演説で、世界的に法人税の最低税率を設定する考えを明らかにしました。新型コロナウイルス対策に伴う大規模な財政出動で赤字が拡大していることを受け、米国など複数の国が法人減税を検討していることを受けたものです。イエレン氏は「各国政府が安定した税制度を確保するのが肝心だ」と力を込めています。

 現在は法人税率を各国がそれぞれ自由に定めることができるため、他国より法人税率を0%に近づけることで企業を誘致する「減税競争」が過熱してきた経緯があります。シカゴ国際問題評議会で演説したイエレン氏は、世界的な法人税の最低税率の設定に向けて取り組んでいることを明かし、「各国政府が十分な歳入を得た上で必要不可欠な公共財への投資や危機対応を行える」と意義を強調しました。

 同時に、そうした減税競争を利用して利益に見合う税負担を免れてきた多国籍企業に対して、より課税を公平に行っていく方針を示しました。トランプ前政権は、多国籍IT企業の多くが米国に本社を置いていることを理由に課税強化に積極的ではありませんでしたが、バイデン政権がそうした姿勢を転換させれば、デジタル課税の議論が一気に進む可能性もあります。

 イエレン氏が提唱した最低税率の設定は、コロナ禍での法人増税を検討する米国から企業が逃げ出すことを防ぐための、いわば自国の利益を守るための一手ではあります。とはいえ英国も法人増税をすでに決定するなど、各国でコロナ禍に伴う財政出動で国家収支が悪化するなか、法人増税の動きは今後も広がっていきそうな状況です。法人税の減税競争によって税収を失ってきた各国からは、米国の提案に同調する声が出ています。麻生太郎財務相は閣議後の会見でイエレン氏の発言について、「法人税の引き下げ競争を止める意味でもいい流れだ」と評価しています。
<情報提供:エヌピー通信社>