日税連保険サービスはこのほど、「税理士職業賠償責任保険(税賠保険)事故事例」の最新版を公表しました。2023年7月から24年6月までの特徴的な税賠事故が対象で、保険金が支払われた22件と、支払われなかった4件が掲載されています。
税賠保険は、税理士・税理士法人が「税理士の資格に基づいて行った業務」に起因して保険期間中に日本国内で損害賠償請求を受け、法律上の賠償責任を負担したことにより被る損害に対して保険金が支払われるもの。
今回公表された掲載事例のうち支払い対象となった事故は主契約が18件、事前税務相談業務担保特約が4件。対象税目でみると、主契約では消費税が7件で最も多く、所得税が5件、法人税が3件、相続税、住民税、事業所税が各1件。事前税務相談業務担保特約では消費税、法人税、贈与税、法人事業税が各1件でした。
保険金が支払われなかった事故の掲載は4件。このうち、そもそも税賠保険の対象ではなかった事例は、「中小企業倒産防止共済の掛金が前納できなかったことにより、過大納付法人税額が発生した事例」(法人税)。
この事例は、多額の利益が出る見込みだった顧問先企業に対し、税理士が中小企業倒産防止共済の掛金240万円を前納して損金算入額を上積みする決算対策を提案したというもの。顧問先は了承したものの、前納期限が過ぎていたため、その分が法人税の過大納付になりました。損害賠償請求を受けた税理士は保険金の受け取りを申請しましたが、「共済の申し込み手続きは、税理士法に定める税理士の業務に当たらない」として主契約での支払対象にならないと判断されました。また、顧問先から利益圧縮について相談を受けていない中で、「『顧客の求めに応じて行うアドバイス』ではなく、『良かれと思って行ったアドバイス』」という観点から、事前税務相談業務担保特約の対象にもならないと却下されています。
<情報提供:エヌピー通信社>