エヌピー通信社:マイナカード取得率で自治体〝選別〟

 マイナンバーカードの普及に向け、政府が新たな策を検討しています。9月下旬に判明した案によると、地方のデジタル化に向けて来年度に創設する交付金を巡り、マイナンバーカードの交付率を自治体への配分額に反映させるそうです。交付金の一部を、「住民のカード取得率が全国平均以上」でなければ受給を申請できない仕組みにするとのこと。国はカード取得率向上を後押ししたい狙いですが、マイナンバー制度への取り組みで自治体を〝選別〟するような手法に、自治体からはさっそく反発する声も出ています。

 検討しているのは、デジタル技術を活用した地域活性化事業を支援するとして来年度からスタートさせる「デジタル田園都市国家構想交付金」。内閣官房と内閣府が来年度予算案の概算要求に1,200億円を計上しています。検討中の案によれば、交付金の一部は、全国のモデルとなるような事業を実施する自治体に配分するとしています。

 その基準の一つとして挙がっているのが、マイナンバーカードの取得率。検討中の案では、住民によるカード取得率が全国平均を上回っていないと交付金を申請できないようにするそうです。「一定以上の取得率」ではなく「平均以上」ということは、単純にはいえないものの半数の自治体が交付金を受け取れない可能性があることになります。少なくとも取得率が全国ワーストの37.9%の沖縄県などは、対象外となる見込みです。

 この異例とも言えるやり方に対しては、地方から反発する声が上がります。群馬県の山本一太知事は記者会見で、「上から恫喝するみたいなかたちで、アプローチ自体が間違っていると思う」と国の手法を批判。同県の取得率は全国平均を下回り全国ワースト3位となっています。山本知事は、県内の取得率が伸び悩んでいることを「私の努力不足」としながらも、「マイナンバーカードは国の制度で、政府が一義的に責任を負わないといけない」と述べ、「国が、国民が利便性を感じる制度にするのが最初だ」と注文を付けました。

 マイナンバーカードの取得率は、最大2万円分のポイントを付与する「マイナポイント」事業などの成果もあって、ようやく過半数を超えた状況。国は9月末となっていた同事業を3カ月延長し、取得率の上積みを目指しています。
<情報提供:エヌピー通信社>