金融庁が2023年度の税制改正要望に、少額投資非課税制度(NISA)の投資上限額の引き上げや非課税保有期間の期限撤廃などを求めることがわかりました。NISAの拡充は岸田文雄首相が掲げる「資産所得倍増プラン」の柱の一つで、中間層の投資を促す狙いがあります。
NISAは投資信託や株式の売却益や配当益が、一定の枠内 で非課税となる制度。積み立て式の「つみたてNISA」では金融庁が認めた投資信託に年間最大40万円、20年間投資できます。現在は2042年までの時限的措置となっていますが、制度の恒久化も要望には盛り込まれました。
日本国内の個人金融資産は約2千兆円に上るとされ、このうち半分以上が現預金で保有されています。岸田文雄首相は今年5月、ロンドンで行った講演で、この個人資産を貯蓄から投資に誘導する「資産所得倍増プラン」を始めると発表しています。
ただ、NISA拡充で中間層の投資が進むか、効果は不透明です。現状でも中間層や低所得者の投資が進んでいないことから、「格差の拡大につながる」と批判が出る可能性もあります。すでに岸田首相は、昨年の自民党総裁選で目玉政策に掲げていた富裕層の所得で占める割合の高い金融所得への課税強化を見送ったことなどから、「分配」を標榜する経済政策への批判が出ています。
政府関係者は「政策の対象となる層を慎重に議論をしていく必要がある」と話しています。引き上げ額は要望には盛り込まれませんが、これをもとに年末の与党税制調査会で具体的な議論が進む見込みです。
<情報提供:エヌピー通信社>