国税庁は、2020事務年度の富裕層に対する実地調査結果を公表しました。
それによりますと、2020事務年度(2020年7月から2021年6月までの1年間)において、新型コロナウイルス感染症の影響による調査事務量の減少から、調査件数、申告漏れ所得金額や追徴税額等は減っているものの、富裕層への調査を積極的に行っており、1件あたりの申告漏れ所得金額は増加していることが明らかになりました。
国税庁は、有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が高額な者に対して、資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に調査を実施しており、所得税調査における重点課題と位置付け、積極的に取り組んでおります。
2020事務年度には、前事務年度比▲51.6%(▲はマイナス)の2,158件の富裕層に対する実地調査が行われ、同▲38.3%の申告漏れ所得金額487億円が把握されました。
富裕層に対する所得税の実地調査の結果、調査件数の約85%に当たる1,843件(前年対比▲52.0%)から何らかの非違を見つけ、その申告漏れ所得金額487億円について、117億円(同▲54.8%)を追徴しました。
また、調査件数等が減少するなか、1件あたりの申告漏れ所得金額は過去最高の2,259万円(同27.8%増)、追徴税額は543万円(同▲6.5%)となりました。
調査事例では、内国法人の代表者である調査対象者Aに対し、国外財産調書から、不動産投資の目的で設立した外国法人からの収益の申告漏れが想定され、Aに同法人からの配当の授受について確認したところ、同法人の決算書を提示の上、同法人からの配当はないとの申立てがありましたが、その内容に疑義があったため、同法人が所在するB国の税務当局に対し、租税条約等に基づく情報提供要請を行いました。
その情報提供要請により、Aが同法人から配当金を受領しており、B国においてその配当に課税されている事実を把握し、Aにその内容について説明を求めたところ、配当所得の課税を免れるため、虚偽の決算書を作成し証拠書類として提示した事実を認めました。
その結果、Aに対して、所得税3年分の申告漏れ所得金額約2億3,400万円について税額(重加算税含む)約8,900万円が追徴されました。
(注意)
上記の記載内容は、令和4年6月6日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。