2020年度(2021年3月までの1年間)査察白書によりますと、同年度中に一審判決が言い渡された87件のうち86件(98.9%)に有罪判決が出され、うち6人に対し実刑判決が言い渡されております。
マルサと呼ばれる査察は、大口・悪質な脱税をしている疑いのある者に対して、犯罪捜査に準じた方法で行われる特別な調査です。
調査にあたる国税査察官には、裁判官の発する許可状を受けて事務所などの捜査をしたり、帳簿などの証拠物件を差し押さえたりする強制捜査を行う権限が与えられ、単に免れた税金や重加算税などを納めさせるだけでなく、検察への告発を通じて刑罰を科すことを目的としております。
刑罰とは懲役や罰金ですが、以前は、実刑判決はなく、執行猶予と罰金刑で済んでおりました。
しかし、懲りない面々に対して、1980年に初めて実刑判決が出されて以降は、毎年実刑判決が言い渡されております。
実刑判決で最も重いものは、査察事件単独に係るものが懲役2年6ヵ月、他の犯罪と併合されたものが懲役3年でした。
全国初の告発事案となった暗号資産事案では、Aはビットコイン等の暗号資産の取引を行い、多額の利益を得ていましたが、同取引に係る利益を申告から除外する方法によって所得税を免れており、Aは所得税法違反の罪で、懲役1年(執行猶予3年)及び罰金1,800万円の判決を受けました。
一審判決があった87件の1件あたり平均の犯則税額は5,700万円、懲役月数は14.1ヵ月、罰金額は1,300万円でした。
査察の対象選定は、脱税額1億円が目安といわれ、また、脱税額や悪質度合いの大きさが実刑判決につながります。
査察で告発されますと、社会的信用を失うだけでなく、巨額な罰金刑や実刑判決もあります。
なお、刑罰は10年以下の懲役に、罰金は1,000万円(脱税額が1,000万円を超える場合は、脱税相当額)以下となっております。
同年度中に着手した査察事案について、告発の可否を最終的に判断(処理)した件数は113件あり、このうち検察庁に告発した件数は73.5%(告発率)にあたる83件ありました。
(注意)
上記の記載内容は、令和3年10月1日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。