厚生労働相の諮問機関「中央最低賃金審議会」が2021年度の地域別最低賃金について、都道府県の時給を一律28円引き上げるよう求める目安を厚労相に答申しました。引き上げ幅は過去最大。経営者側は新型コロナウイルス感染拡大による経済状態悪化を理由に抵抗しましたが、政府方針を背景に引き上げで決着しました。
新たな最低賃金は10月ごろから適用されます。時給換算で現行の全国平均902円は930円となる予定です。
政府は16年度以降、経済再生のため早期に全国加重平均で1,000円を目指すとし、19年度まで4年連続で3%以上(20円台)の引き上げが行われました。しかし20年度は新型コロナの感染拡大による企業業績悪化を背景に審議会は目安を示さず、0.1%(1円)の引き上げにとどまっていました。
今回の引き上げには菅義偉首相の強い意思が反映された形です。コロナ禍で非正規労働者や医療など生活に不可欠なエッセンシャルワーカーの低待遇に注目が集まったことに加え、政府は地方移住を推し進める観点からも、賃金水準を底上げして地域経済を活性化させる必要性を強調してきました。
6月に閣議決定した「骨太の方針」にも「早期に全国加重平均1,000円」が盛り込まれています。衆院選を前にした今年は特に、庶民の生活底上げをアピールしたいという意識も見え隠れするといえそうです。
一方、コロナ禍の影響でサービス業を中心に経営環境は厳しい状況です。特に中小企業にとっては人件費の増加は負担ともなります。こうしたことから日本商工会議所の三村明夫会頭は「先が見通せない中、大幅な引き上げは到底納得できない。多くの経営者の心が折れ、廃業がさらに増加し、雇用に深刻な影響が出ることを懸念する」とのコメントを発表しています。
<情報提供:エヌピー通信社>