会計検査院はこのほど、東日本大震災で被災した中小企業に施設や設備の復旧資金を貸し付ける支援事業についての調査結果を公表しました。それによると、中小企業基盤整備機構が実施した支援事業で、国の出資金を使って企業に貸し付け、その後返済された約95億円が、再び使用される見込みがないまま機構に残っていたことが分かりました。
検査院からの指摘を受けた中小機構では昨年11月、全額を国庫に返納しています。また今後発生する償還金についても年度ごとに国庫に納める方針としています。
検査院によると、資金の滞留が確認されたのは「東日本大震災に係る被災中小企業施設・設備整備支援事業」。中小機構は2011年8月、北海道と青森、岩手、宮城、福島、千葉各県の中小企業に対し、被災した店舗などの復旧費用を無利子で貸し付けるこの事業を開始しました。
中小機構からの貸付金は総額約1,400億円に上ります(23年度末時点)。財源には、震災前から中小機構が保有していた資金のほか、この支援事業に使途を限って国が12年に追加で出した資金が充てられてきました。検査院は国が追加出資した合計500億円について調査。24年4月までに95億8,127万円が償還されましたが、再び貸し付けたのは16年度の7,381万円のみで、差額の95億746万円が機構内部に残るかたちとなっていました。
独立行政法人通則法では、業務を実施するうえで不要となった財産は遅滞なく国庫に納めると定められていますが、機構は17年5月の段階で償還金を「再使用する可能性がある」と判断し、返納していませんでした。これに対し検査院は、新たな貸し付けが必要になっても、機構の別の財源で対応できたものと結論付けました。
<情報提供:エヌピー通信社>