エヌピー通信社:相続土地国庫帰属制度の利用件数

 法務省が公表した2024年度の「相続土地国庫帰属制度の運用状況」によると、23年4月27日の制度開始から今年3月末までの累計申請件数は3,580件で、このうち国に帰属されたのは1,486件でした。運用初年度の24年3月末時点での申請件数は約11カ月間で1,905件でしたが、2年度目となる25年3月末時点での申請件数は1,675件にとどまっています。

 法務省がこのほど公表した4月末時点の累計申請件数(速報値)は3,732件で、1カ月の申請件数は152件。このままのペースで推移すれば年間1,800件前後の申請が見込まれるものの、制度の利用は思いのほか進んでいないといえます。
 法務省が公表した最新(4月末時点)の累計申請件数3,732件を地目ごとの内訳でみると、「田・畑」が1,431件で全体の38%を占めています。「宅地」が1,302件で35%、「山林」が582件で16%、「その他」が417件で11%となっています。
 国に帰属された件数は1,586件。却下された件数は58件、不承認となった件数は54件、申請を取り下げた件数は604件でした。

 申請件数が思いのほか伸びていない理由としては、申請時の必要書類が多いこと、引き取り要件が多岐にわたることなどが挙げられます。申請の際には一筆当たり1万4千円の審査手数料が必要で、申請を取り下げた場合でも返還されず、再申請のたびに費用がかかります。国に帰属されたケースでも10年分の土地管理費相当額の負担金が必要。また、審査に時間がかかることも申請件数が伸びない要因だとされています。申請を受理する各地の法務局では審査に要する標準的な期間を「約8カ月」としています。
 法律の附則には、施行5年後に制度の見直しを検討すると明記されています。少子高齢社会の進展による相続の増加で、今後も制度の対象となる土地は増え続けます。そうした状況にもかかわらず申請件数が伸びないのは、制度が使いにくいものだからだといえます。国は28年の法改正に向けて、要件緩和や負担金減額などの検討に着手するべきでしょう。
<情報提供:エヌピー通信社>