総務省は、令和6年度個人住民税検討会報告書を公表しました。
所得税(国税)は、所得が発生した年に課税・納税が行われる「現年度課税」であるのに対して、個人住民税(地方税)は、前年中の所得を基準として翌年度に課税する「翌年度課税」となっております。
個人住民税の翌年度課税の仕組みは、課税団体を明確化しつつ、納税義務者、企業および地方団体の事務負担に配慮したものですが、定年退職などにより、前年に比べて収入が大きく減少した者にとっては、税の負担感が重くなるなどの課題が指摘されてきました。
日本経済団体連合会や日本商工会議所からは、「現行の仕組みで致命的な問題が生じていない中であえて現年課税化する必要はなく、なぜ現年課税化が必要なのか納税者や企業の納得を得るよう、丁寧に説明する必要がある。さらに、未曾有の人手不足に見舞われる中小企業や自治体の双方に多大な事務負担を押し付け、生産性を低下させる極めて影響の大きい制度変更であり企業の納税事務負担の増加を招く個人住民税の現年課税化には反対」といった意見も挙がっております。
検討会では、所得税方式や市町村精算方式を導入した場合に、企業や市町村において追加となる事務負担を具体的に確認していく必要があるのではないか、働き方の多様化を踏まえた公平性の観点から現年課税化により公平性を担保できるのではないかなど、引き続き検討が必要な論点についての指摘が出されました。
今後、これまでの検討会における課題の整理や、行政手続や企業事務のデジタル化のさらなる進展を見据えて、関係者の事務負担を軽減する手法を引き続き模索し、そのためにはどのような技術的な対応が必要なのかといった実務的な面を引き続き検討していくとともに、その実現にあたっての制度面の課題などについて、関係者の意見をよく伺いながら検討を深めていく必要があることを示しました。
また、今後は働き方の多様化を踏まえた公平性の観点や、出国者への課税の観点からも、中長期的な視点で検討を深めていく必要があることも示しております。
今後の動向に注目です。
(注意)
上記の記載内容は、令和7年5月1日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。