厚生労働省はこのほど、自民党の社会保障制度調査会に基礎年金(国民年金)の底上げ案を提示しました。実際に発動するか否かは経済情勢などを踏まえて2029年以降にあらためて判断する「景気条項」を盛り込みます。底上げに必要な財源は厚生年金の積立金と国庫負担(税金)で賄う内容。3月上旬をめどに関連法案の国会提出を目指すとしています。
現行制度では少子化や長寿化に応じて年金を減額調整する「マクロ経済スライド」の仕組みが、基礎年金と厚生年金それぞれに導入されており、経済状況が横ばいで推移した場合、将来の国民年金が3割程度目減りする見通し。厚労省の試算によると、厚生年金は26年度にも減額が終わります。一方の国民年金は57年度まで減額が続くため、給付水準の底上げが必要とされています。厚労省の検討案では、いずれも36年度に減額調整を終わらせる方針。
厚労省では当初、厚生年金の積立金を活用して国民年金の減額期間を短縮し、底上げを図る考えでしたが、関連法案に「景気条項」を盛り込み、実施の判断については29年に予定する年金制度の「財政検証」以降に先送りします。
ただし、この底上げ策をめぐっては、年間で最大2.6兆円の追加が必要だと見込まれる国庫負担の財源が決まっていません。また、厚生年金の減額調整が先行することに世論の根強い反発もあるため、自民党内では実施に慎重な意見も出ていました。
このため厚労省では、公的年金の長期的な見通しを示す5年に1度の「財政検証」が予定されている29年以降に実施の判断を先送りしました。また、厚生年金の伸びを抑える抑制措置については、少なくとも30年度まで続ける方針を打ち出しています。
厚生年金加入者としては、本来ならば26年度にも終了するはずだった減額調整の期間が最短でも30年度までは続くうえに、国民年金の底上げに必要だとされる追加の国庫負担分についても「財源確保」という名目で別の新たな税負担を強いられる可能性があります。
<情報提供:エヌピー通信社>