政府がこのほど閣議決定した「高齢社会対策大綱」には、「働き方に中立的な年金制度の構築を目指して、さらなる被用者保険の適用拡大等に向けた検討を着実に進める」と明記されました。「高齢社会対策」としての「年金制度の構築」を目指すため、アルバイト・パートタイマーとして働く短時間労働者の社保適用範囲を広げるとともに、在職老齢年金の見直しを視野に入れた表現となっています。また75歳以上の後期高齢者の医療費については、窓口負担が3割となる対象範囲の拡大を検討すると明記しました。
「大綱」と歩調を合わせるかたちで、年金制度改正法(年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律)により、10月から短時間労働者に対する社会保険の適用範囲が拡大されました。同法によって2016年からは従業員数「501人以上」の事業者に雇用される短時間労働者が対象となりました。22年10月には「101人以上」に適用範囲が拡大され、この10月からはさらに「51人以上」の職場で働く短時間労働者が要件をすべて満たしている場合、新たに社会保険の適用が義務化されることとなりました。
給与から社会保険料が差し引かれるため従業員の手取り額は減ります。事業者側も社会保険料の支出が増加。労使双方にとって負担増となるので、必然的に「働く時間を調整」して適用対象から外れようとします。最低賃金の引き上げもあって、月額賃金を抑えるにはさらなる〝時短〟が必要となります。従業員に就業調整されてしまう事態は、人手不足に悩む中小事業者にとって死活問題となりかねません。
加えて、短時間労働者を社会保険に加入させない事業者には6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金という厳しい罰則まで用意されており、保険料の未納分には延滞金も発生します。インボイス、電帳法、そして社会保険と、中小事業者の負担は増すばかりです。
<情報提供:エヌピー通信社>