新しい資本主義実現会議(議長・岸田文雄首相)は6月に開いた会合で「新しい資本主義実行計画の改訂案」を取りまとめました。首相は会合で、「事業承継税制の要件緩和の検討を図ります」と発言。また「スタートアップ育成5カ年計画の強化とともに、中小・小規模企業の事業承継やM&A・グループ化を進めるため、仲介事業者の手数料の開示や、M&Aの際に経営者保証を見直す枠組みを導入します」と述べました。
中小企業の事業承継を後押しする税制優遇の特例措置について、現行は2024年末となっている後継者の役員就任期限を25年以降に延長します。承継時の税負担を軽くする事業承継税制では、非上場株などの贈与税や相続税の納付を猶予しています。現行制度で贈与税の優遇を受けるには、24年末までに役員に就任する必要がありました。
中小企業の非上場株式を取得した後継者の贈与税や相続税の納税を全額猶予する事業承継税制の特例に関しては、首相が「要件を緩和する」方針を示したことで、改訂案に盛り込まれる公算が高くなりました。現行では経営を引き継ぐ際に、その企業の役員就任後「3年以上」を経過している必要がありますが、25年度の税制改正でこの期間を短縮する方針。要件とする役員在任期間をどこまで短縮するかは、自民党税制調査会で検討した上で、年末にかけて行う与党との税制改正協議で決めます。
会合に出席した委員からは「経営者の意向に沿った事業再生やM&Aの円滑化への支援が欠かせない。銀行の役割も大きく、M&Aの際の既存融資の経営者保証見直しの検討、M&A仲介サービス業務の強化などの施策は重要」、「中小企業やスタートアップにおける事業承継・M&Aを円滑に進めるため、例えば事業承継税制における役員就任要件を恒久的に撤廃するなど、税・財政面での支援を進めてほしい」、「M&Aの阻害要因となっている〝のれん〟の償却を見直す必要がある。実態に合った処理方法を選択できるように、のれん償却を定める日本会計基準の見直しを行うべき」といった意見が出ました。
<情報提供:エヌピー通信社>