国税庁はこのほど、オンラインで行う「リモート税務調査」の対象を拡大することを決めました。これまでは約500社の大企業に限定して試験的に取り組んできましたが、企業の要望や調査の効率化などの観点から、その対象を約3万4千社に広げます。
国税庁は昨年10月から新たな取り組みとして、全国の国税局調査部の特別国税調査官が所管する資本金40億円以上の大企業、いわゆる「特官所掌法人」の約500社のみを対象としてリモート調査を行ってきました。今後は調査対象を資本金1億円以上の企業、いわゆる「調査課所管法人」まで広げる方針。調査課所管法人は全国に約3万4千社で、大幅な対象拡大となります。
リモート調査の特徴は、当局が用意したシステムを利用して調査の全てがオンラインで完結することです。調査資料のやり取りもすべてオンライン上で行われ、当局が指定したオンラインストレージサービスに帳簿等の調査資料をデータのままアップロードすれば調査官と対面する必要はありません。また調査の全部ではなく一部のみをオンライン対応とすることも可能で、例えば資料はオンラインで提出し、聞き取り調査などは直接対面して行うということも認められます。
リモート調査では、企業は貸出用の機材を用意する必要がなく、長時間にわたって調査官と直接対面しなくてよいという点で心理的にも余裕が出てくるなどのメリットがあります。コロナ禍で行われた一部リモート調査でも企業側からは歓迎する声が多かったので、「非実地調査」化は納税者にとってよい面が多くあるようです。
ただ気をつけておくべき点も当然あって、リモート調査か実地調査かを選ぶのは最終的には当局。納税者の要望は聞くものの、必ず聞き入れられるとは限りません。さらにリモート調査になったのに、「調査の必要上、国税当局の判断により、臨場及び直接の対面での調査に切り替える」(国税庁)こともあり、準備が二度手間になってしまう恐れもゼロではないことは留意しておきたいところです。
<情報提供:エヌピー通信社>