役員報酬が同業他社よりも高額になっているとの理由で報酬の経費計上を認めなかった国税当局に対し、京都市の食品会社が処分の取り消しを求めて争っている裁判で、東京地裁は原告の請求を棄却し、国税当局の処分は妥当とする判決を下しました。原告側は結果を「不当な判決」と判断し、控訴するとしています。
裁判では、京都市の食品会社が役員2人に対し支払った4年間の役員報酬約21億5,100万円のうち、約18億4千万円が「不相当に高額」になっているとして国税当局が損金算入を認めなかった処分の妥当性が問われました。同社への追徴課税は約3億8,500万円に上ります。同社は「海外の販路開拓や利益率の改善といった役員の働きに見合った適正な報酬だった」と主張していました。
裁判で焦点となったのは、同業者と役員報酬額を比較することの妥当性。同社の社長は最終弁論で「当社は倉庫や在庫管理システムを持たず製造を外注する『加工食品のファブレス事業者』。しかし国税当局のなかにこのような業種の分類がなく、『卸売業』に分類されてしまっている」と主張していました。卸売業は薄利多売で利益率は低くなりがちな一方、ファブレス事業者は自社設備を持たないことから利益率が高い傾向にあります。
この点につき、裁判長は判決で、「反復継続的に仕入れ・販売することによって売上総利益が生じていることからすると、原告の主たる事業は(中略)『卸売業』に該当する」と認定。原告側は、「卸売業の機能である調達機能、販売機能、物流・保管機能、金融・危機負担機能、情報提供・サポート機能のいずれも有していない」と主張していましたが、これに対しては「金融・危機負担機能については不明」としつつ、他は「機能を有していた」と退けています。
また問題となった役員が関与していたベトナムでの海外事業については、収益は生じていないことを重視しました。役員の赴任が具体化せず、ベトナム新規事業再開のめどが立っていない状況において高額な給与の支給を続けるということは「企業の意思決定としておよそ合理的なものとはいい難い」と断じています。
<情報提供:エヌピー通信社>