政府は導入を目指す「カーボンプライシング(CP)」の具体策について、企業に課税する「炭素税」は制度設計に時間がかかることから、年度内の導入は見送りました。CPは二酸化炭素(CO2)の排出に価格をつけて脱炭素を進める仕組みです。
経済産業省の有識者会議が開かれ、西村康稔経産相は「CO2を多く排出する産業を中心に、効率的かつ効果的な排出削減が可能となるような排出量取引の制度を段階的に発展させていきたい」と表明するとともに、「炭素に対する賦課金の導入もあわせて検討したい」と述べました。
排出量取引市場は、9月に実証事業として始まった「GXリーグ」を発展させます。企業が自主的な排出削減目標を設定することを重視しつつ、2026年度からは削減目標に対する民間第三者認証を設けるなど実効性を高めて排出量取引を本格化させるそうです。電力の脱炭素化を加速するため、将来的には発電部門に対して排出枠を有償で国から調達する「有償オークション」の段階的導入も検討。また、国が一律の価格を決めて負担を求める「賦課金」の検討も進めます。すでに、再生可能エネルギーの普及を目的に企業や家庭の電気代に上乗せする「再エネ賦課金」などを参考に、家庭を除く企業を対象とする考え。すべての企業の排出量把握は実務上困難とみられ、化石燃料の輸入事業者など対象を絞ることも検討します。
CO2排出量に応じた負担を課す手段では、欧州などは排出量に応じて課税する「炭素税」を導入しています。ただ、日本では新たな税を設けるには与党税制調査会での議論が必須。新たな「税」の創設で企業の負担増は必至で、経団連が慎重姿勢を示したままです。また、政府がエネルギー価格高騰に対応する負担軽減策を打ち出す中で炭素税を導入することについては「負担増の議論で、流れに逆行する」(経済官庁幹部)との声が強く、炭素税導入に向けた協議開始は先送りとなりました。
<情報提供:エヌピー通信社>