政府税制調査会(中里実会長)で退職金への増税が検討されています。近年、高所得者の退職金に対する課税強化が続いていて、再び“経営者いじめ”が始まったものといえそうです。
政府税調の会合では、「多様な働き方を選びやすくする」との狙いのもと、所得税のあり方を議論。現在の退職金に関する税制は終身雇用制度が前提となっていて、勤続20年を超えると1年あたりの控除額が増える仕組みとなっています。会合ではこの仕組みが転職をためらう要因になっているとして、委員からは「控除は勤続年数で差を設けず一律にすべきだ」といった意見が出ました。
中里会長は総会後の会見で「長期的な人生設計の前提となる制度の安定性というのは一定程度重要だ」と述べ、既存の制度を前提に暮らしてきた層に配慮が必要との認識を示したものの、今後も「働き方の多様化」のスローガンのもと、増税方向に話が進んでいく可能性は決して低くありません。
退職金は、会社として税務上の費用を多額に計上できるうえ、受け取る側も、①退職所得控除、②2分の1課税、③分離課税――と3層もの税制優遇を受けられ、さらに株価を引き下げる効果もあることから事業承継対策をも含めた経営者の節税対策の王道となっています。しかしここ10年ほど、退職金の税制を巡る課税強化が続いています。
<情報提供:エヌピー通信社>