来年10月にスタートする消費税のインボイス制度を巡り、国税庁はウェブサイトで公開していた登録事業者の氏名などの個人情報を非公開にしました。ペンネームや匿名などで活動する事業者の特定につながるとの指摘を受けて対応。9月下旬にデータのダウンロードを停止して、一部の個人情報を削除した状態で再公開しました。
来年10月に始まるインボイス制度では、免税事業者はインボイスを発行できず取引先は仕入税額控除ができなくなることから、多くの免税事業者がなかば強制的に課税事業者として登録することを強いられています。ただ、登録すると専用サイトで本名を公開されてしまうため、ペンネームや匿名で活動することの多い漫画家、作家、ミュージシャン、俳優などの団体からは「身元の特定につながり、つきまといなどの原因となる」などと懸念する声が多く寄せられていました。サイトでは8月末までに登録した約20万件の個人事業主の名前や登録番号がデータにまとめられ、一括ダウンロードも可能となっていました。
この個人事業者のデータを巡り、国税庁は一括ダウンロードを停止。その後、全データファイルの提供を再開しましたが、①本店または主たる事務所の所在地、②氏名または名称、③国内において行う資産の譲渡等にかかる事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地、④主たる屋号、⑤通称・旧姓――などが削除されています。
本名の公開によるプライバシー侵害のリスクにつき、市民らがつくる「公平な税制を求める市民連絡会」(代表・宇都宮健児弁護士)が8月に国税庁に質疑応答を行ったところ、国税庁からは、「個人事業者の場合は公開するのは住所や電話番号ではなく氏名なので、それだけで個人の特定に至るのは少ないと考えている」との回答を得ていました。この質疑応答があった時点では「(見直す予定は)今のところない」と答えていましたが、その後も本名の公開に対する世間の反発が強かったことから、公開の一時停止に至ったとみられます。
<情報提供:エヌピー通信社>