税務調査のなかでも最も厳しい査察調査、通称「マルサ」の2021年度の調査実績が公表されました。検察庁に告発した件数は75件で、脱税総額(告発分)は61億円、告発した1件当たりの脱税額は8,100万円に上ります。
気になるのは脱税した〝儲け〟の使い道ですが、国税庁は「不正資金の多くは現金や預貯金として留保されていました」としつつも、「不動産や有価証券等への投資のほか、脱税者が費消していた事例もある」として、特徴的な例を複数挙げています。ここでは、国税庁の公表した事例を基に、脱税資金の使途を紹介します。
ある事例では、脱税した資金が高級車の購入に使われていました。業者から受領した車両納品請求書の控えには、支払金額として2014万5,720円という高額な記載があったそうです。
また別の事例では、ズラリと並んだ高級腕時計の写真が公表されています。総額は定かではありませんが、公表された写真を見ると、それこそ数千万円のスポーツカーにも匹敵することは想像に余りあります。
別の脱税犯の銀行口座の記録では、海外カジノを含むオンラインギャンブルの口座に何百回にもわたり送金し、結果的に約8千万円を失ったことが明らかとなりました。海外オンラインカジノは、山口県阿武町の誤送金問題で、数千万円を振り込まれた青年が入金したことでも話題となっていて、ギャンブル依存症の患者の増加が懸念されています。
金額でさらに上を行くのは、インターネットで馬券を購入し、計2億5千万円を費消した事例。この事例では、明らかにされているだけでも300回近く馬券を購入していますが、どれだけ勝てたとしても、それは脱税で告発されるリスクに見合うものではないでしょう。
そして、これらのオンラインカジノや競馬は、お金を増やそうという生産性があると言えなくもありませんが、より一時の享楽のために脱税資金を費消したのが最後の事例。脱税資金を手に高級クラブに通い詰め、毎回100万円近く、トータルで約1千万円を費消しました。「宵越しの金は持たない」というのも一つの考え方であることは否定しませんが、その元手が脱税して得た資金というのであれば、弁護の余地はありません。
21年度には脱税事案117件に一審判決が下され、その全てが有罪判決でした。最も重い実刑判決では、他の犯罪と併合されたもので懲役9年のものもありました。どんなに目の前のお金が魅力的でも、脱税は割に合わないと肝に銘じたいところです。
<情報提供:エヌピー通信社>