他者が関わる犯罪について供述する引き換えに罪を軽減できる「司法取引」制度が、6月で開始4年を経過しました。脱税なども対象となることから、会社ぐるみの脱税などでの司法取引が増えることも予想されましたが、今までに取引が行われたのは、制度スタート直後の贈賄事件、また大企業の元会長による不正疑惑、業務上横領の3件のみ。組織犯罪や大規模な汚職事件の解明に役立つと期待された同制度ですが、その実情は振るわないものとなっています。
「司法取引によって得られた情報の信用性の判断に際しては、相当慎重な姿勢で臨む必要があると考えられる。極力、争点の判断材料としては用いない」
適用3件目となった業務上横領の判決で裁判長が語った言葉は、自己保身のための供述にはウソが含まれやすいとの見解です。ただ、制度の意義そのものに疑問を投げ掛ける言葉でもあるでしょう。取引で得た情報が裁判の証拠にならないのであれば、情報提供した本人が不起訴になるだけという「やり得」になる状況です。
司法取引は制度が軌道に乗れば全国の検察、そして警察へと利用範囲を拡大する予定でしたが、現状は東京地検特捜部の3件のみにとどまっています。
こうした現状を受け、古川禎久法相は記者会見で、現行の司法取引制度の問題点を議論するための協議会を法務省内に設置することを明らかにしました。司法取引の導入を決めた改正刑事訴訟法には「必要に応じて所要の措置を講じる」とあり、この規定に基づき制度内容の見直しなどを議論していくそうです。
<情報提供:エヌピー通信社>