昨年4月に新型コロナウイルス感染症で亡くなった料理人の神田川俊郎さん(享年81)の遺産を巡り、生前に経営していた日本料理店の土地の相続登記が1年経っても行われていないことが分かりました。一部週刊誌が報じました。多くの相続において、遺産の大半を占める土地の分割協議が長引くと、税負担が増えるだけでなく、様々な将来のトラブルの種ともなりかねないので注意が必要です。
神田川さんの遺産には、大阪市内の自宅マンションに加え、北新地にある『日本料理神田川本店』があります。このうち自宅マンションについてはすでに長男が登記を行っていましたが、相続発生から約1年が経過しても店については登記が行われていないそうです。
神田川さんは3度の結婚と離婚を繰り返しており家庭関係も複雑ですが、よくあるような遺族間の「争族」が発生しているわけではないようです。長男が週刊誌の取材に答えたところによれば、『神田川本店』が法人化しておらず、神田川さんが個人事業主として運営していたことが事態を難しくしているとのこと。光熱費や人件費がすべて神田川さんの個人口座から捻出されていたのが、新型コロナによる急死で、運営資金を一切引き出せなくなってしまい、店舗経営の立て直しに時間がかかっているのだそうです。
遺産分割協議でも、遺族同士で対立があるわけではありませんが、遺産の大半が北新地に構える店の土地であり、分割ができないことが長期化している理由です。
神田川さんの相続のように、相続人同士でトラブルがなくても遺産分割がすんなりまとまらないことは珍しくありません。相続税の申告期限は、相続の発生から10カ月で、それを経過すると原則として加算税や延滞税の負担が上乗せされることとなります。神田川さんの遺族はすでに相続税の申告は済ませているといいますが、遺産の帰属先が確定しないことは税金面以外でも様々なトラブルの種となりかねません。
新型コロナのように予想できない万が一の事態があることも考え、最低限の備えは日頃から講じておきたいところです。
<情報提供:エヌピー通信社>