ふるさと納税制度で多額の寄付を集めたことを理由に特別交付税を減額したのは違法だとして、大阪府泉佐野市(千代松大耕市長)が国を訴えた裁判で、大阪地裁は3月、泉佐野市の訴えを全面的に認める判決を下しました。ふるさと納税を巡る国と泉佐野市の法廷闘争は、制度からの除外処分を違法とした判決に続いて国側の連敗となりました。国は判決を不服として控訴しています。
特別交付税は、財政基盤の弱い自治体の財源を国が補てんする制度。泉佐野市にも2018年12月期には約4億3,502万円が交付されていましたが、19年度同期の同市に対する特別交付税は710万円と前年より4億円以上減額されました。その理由は、交付決定直前に行われた「配分はふるさと納税の収入を加味する」とした新ルールが導入されたためです。
同市はこれに対して、「省令を都合よく改正して、国に従わない自治体を狙い撃ちにした」と猛反発。市によれば、ふるさと納税の寄付金は使途を指定されているものが多いため減額分の穴埋めに転用はできず、地域の病院の運営費に充てられるはずだった交付税は「地域住民の生命と健康を守るための費用だった」としています。同市は不服審査を総務省に申し立てましたが、交付額の金額の算定に対する不服は審査の対象外にならないとして却下されたため、20年6月に訴訟していました。
対する国は、行政処分に対する抗告訴訟は個人の権利を救済するための制度であり、自治体は原告になり得ないと主張してきましたが、昨年4月の中間判決では、「交付税の交付額の決定について提訴を認めないとする明確な規定は存在しない」として、国の主張を退け、訴訟の対象になると認定していました。
今回の判決で裁判長は、特別交付税の算定方法について税法では、自治体の標準的な収入である「基準財政収入額」などを考慮して定めていると指摘し、ふるさと納税は「算定の基礎となる収入項目に当たらない」としました。その上で、総務相が判断する省令改正によるふるさと納税を理由とした減額は、「委任の範囲を逸脱した違法なもの」と結論づけています。また交付税の減額が訴訟になるかについても、「交付税額の決定は優越的地位に基づく公権力の行使で行政処分にあたる」として、自治体による訴訟の対象になるとの判断を改めて示しました。
<情報提供:エヌピー通信社>