企業と従業員が折半して納める雇用保険料が、来年度の引き上げを避けられない状況です。長引くコロナ禍で、一時的と思われていた雇用調整助成金(雇調金)の特例による給付が財源を圧迫しているためです。
雇用保険は大別して、①失業者に手当を払う「失業等給付事業」と、②休業者や転職者らを支援する「雇用保険二事業」があります。雇用調整助成金については本来②が財源となりますが、コロナ禍で同助成金の支給上限をほぼ倍額に引き上げるなどの特例措置を講じたことで②だけでは足りなくなったため、①から1.7兆円を穴埋めするなどの対応をこれまで行ってきました。雇調金の財源に①を充てるのは、リーマン・ショック以来とのことです。
しかし今、長引くコロナ禍により、①を充ててもなお雇用調整助成金の財源が枯渇しつつあります。政府は雇調金について今年度1.2兆円の支出を見込んでいましたが、すでに8月までで1兆円を超えました。当面は①の予算をさらに投入してしのぐ構えですが、本来の①の事業予算にも食い込むことから、来年度からの保険料引き上げは避けられない情勢です。
今後の検討次第であるものの、保険財政が厳しければ料率を引き上げるとする原則どおりにすると、来年度からは、雇用保険料の負担が個人としては約2倍、会社としては約1.6倍に跳ね上がる恐れもあります。
<情報提供:エヌピー通信社>