中小企業経営者の節税手法として活用されてきた一部の生命保険について、国税庁は名義変更時の評価方法を見直す改正通達を発遣しました。今後は低解約返戻金型の定期保険について、低額で経営者個人に譲渡して行う節税策が使えなくなります。規制の対象となるのは、2019年7月8日以後に加入した保険契約の、今年7月1日以降に行われる名義変更です。
今回の通達で見直されたのは、加入当初は保険料が割高な上に解約返戻金も極端に低く抑えられているものの、一定のタイミングで返戻金が急増するように設定されている保険商品の評価ルールです。保険の譲渡額は、譲渡時の解約返戻金相当額で評価されるため、法人で加入して割高な保険料を会社で負担し、返戻金が急増する直前に名義を経営者個人に変えると、経営者は低い返戻金相当の金額で保険契約を手に入れ、その後、急増した高額の返戻金を受け取れるという仕組みになっていました。
改正通達では同種の保険について、個人が会社から保険を譲渡される時の評価額の計算方法を変更し、解約返戻金が法人の資産計上している保険料の7割に満たなければ従来の解約返戻金としてではなく資産計上額で評価するとのルールを提示しました。それまで支払ってきた保険料と返戻金に著しいかい離が生じているときには、返戻金相当額での譲渡を認めないことになります。
なお、先立って発表されたパブコメの募集結果では、当局は「今回の見直しの対象は、法人税基本通達9-3-5の2の適用を受ける保険契約等に関する権利としていますが、法人税基本通達の他の取扱いにより保険料の一部を前払保険料に計上する『解約返戻率の低い定期保険等』及び『養老保険』などについては、保険商品の設計などを調査したうえで、見直しの要否を検討することとしています」と答え、今後のさらなる規制強化にも含みを持たせています。
<情報提供:エヌピー通信社>