自民党「財政再建推進本部」(本部長=下村博文政調会長)の「財政構造のあり方検討小委員会」(委員長=小渕優子元経済産業相)が3月中旬、東京・永田町の党本部で開かれました。新型コロナウイルス対策で悪化した財政の健全化が急務との認識を共有する一方、一部議員からは社会保障財源を今後も消費税に頼ることに限界があるとの見解も示されています。
同本部は例年3月ごろに始動して、政府が6月に「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」をまとめるのに合わせ、経済成長と財政再建の両立に向けた党としての改革案を提言しています。小委はその具体策の取りまとめを担う組織です。昨秋は、医療機関に支払う窓口負担の引き上げ(1割→2割)の対象となる後期高齢者の範囲を巡り「原則全員」とする中間報告をまとめ、高所得層に限定すべきだとした医師会・厚生労働省系の議員らと対立しました。
この日の会議は冒頭以外、非公開で行われました。出席者によると、日本経済研究センターの小峰隆夫研究顧問が日本の経済財政の課題について講義し、財政悪化の主因である社会保障費は「安定財源としての消費税を必要としている」と指摘。これに対し、一部議員が「社会保障と消費税を結びつけるのはもう難しいのではないか」と疑問を呈したそうです。
発言の趣旨について、出席した議員の一人は「消費税の増税は当面、不可能という意味で言ったのだろう」と解説します。菅義偉首相が「10年間は引き上げない」と公言していることも背景にあるとみられます。
財務省幹部らは一様に「消費税は10%に上げたばかり。すぐまた増税とはいかない」と認めています。とはいえ、党内でも財政に理解があるはずの「財政規律派」の議員からも増税に慎重な声が上がったことは、同省の今後の財政再建シナリオに影を落としそうです。
<情報提供:エヌピー通信社>