国内旅行大手のJTBが、資本金を現在の23億400万円から1億円へ減資することが分かりました。税法上の中小企業となることで、様々な優遇措置を利用することが狙いとみられます。企業体力のある実質的な大企業が中小税制の恩恵を受けられる現行制度は不公平との指摘は根強くあります。相次ぐ大企業の中小化によって、今後は中小企業の定義を含む見直し議論がますます加速しそうです。
JTBは2月の株主総会で減資を決議して可決しました。3月31日付で実施します。コロナ禍で旅行需要が激減するなかで業績が低迷し、国内店舗の統廃合や早期退職などによる経営のスリム化を図っていましたが、苦境を脱するには至りませんでした。
記録的な業績低迷におちいっているとはいえ、同社は非上場ではあるものの売上高1兆円、従業員2万人を超えるまぎれもない〝大企業〟です。企業体力に乏しい中小企業を支援する目的で設けられている様々な税優遇を同社が利用するのは違和感をぬぐえないところです。
もっともコロナ禍で同じ動きを見せたのはJTBだけではありません。航空会社のスカイマークや毎日新聞なども減資する方針を示しています。
資本金を減らすということは自社の置かれた窮状を公表することにほかならず、対外的な信用を下げるのは間違いありません。にもかかわらず多くの企業が減資に踏み切る理由は、それだけ中小企業にのみ適用される様々な税優遇が魅力的だからです。
現在の基準では、資本金が1億円以下であれば税法上の中小企業として認められ、大企業に比べて財務基盤がぜい弱であることなどを理由に、年800万円の所得までは法人税率が本則19%から15%に軽減されます。また800万円までの交際費を損金に含められ、欠損金の全額を繰り越せるほか、法人事業税の外形標準課税を課されません。そのほか設備投資などに対する減税措置も中小企業であれば優遇されることが多く、資本金を減らすだけに見合わないほどの数多くのメリットがあります。
<情報提供:エヌピー通信社>