会計処理の方法には、「発生主義」と「現金主義」の2つの方法があります。
■現金主義
現金主義とは、収益(収入)を現金等の入金時に認識・計上し、費用(支出)を現預金の出金時に認識・計上する会計処理の方法です。
現金主義における「収入」とは、ある取引で現金や預金に入金があるものを指し、「支出」とはその反対の現金や預金から出金したものを指します。
つまり、現金や預金の入出金の事実があって初めて取引が認められるもので、きわめて単純明瞭な会計処理方法といえるでしょう。
日本では、小規模事業者である青色申告者の事業所得等については現金主義による会計処理が認められています(現金主義選択適用者の届出が必要)。
しかし、現金主義には会計上の不都合もあります。例えば、商品やサービス代金を前払いした場合、実際に対価が提供されるのはまだ先であっても当該期間の費用として計上しなければなりません。
反対に、代金は後払いで商品やサービスはすでに提供されている場合であっても、代金を支払うまでは費用として計上できないことになります。
したがって、現金主義では、リアルタイムで会社の経営実態を正確に把握することが困難になります。
■発生主義
発生主義とは、実際には現金の収入や支出がなくても、将来的な収益に結びつく経済価値があるかどうかに着目して費用や収益を計上する会計基準のことです。
つまり、金銭のやり取りの有無に関係なく取引が発生した時点で費用と収益を計上する会計処理の方法です。
売上の収入金額、費用の支出金額が確定した時点の日付で計上しますので、掛売上や掛仕入など、現金のやり取り(入出金)がまだ行われていなくても取引が確定しているならば計上することができます。
さらに、事業資産の減価償却費も計上が可能であり、費用を均等に配分できるため、正確な財務状況の把握に役立ち、売掛金、買掛金などが把握できるため資金繰りの状況認識も可能となります。
したがって、一般的に会社(法人)における会計処理は、発生主義が採用されています。
また、個人事業者が最高65万円の青色申告特別控除を受ける場合も、発生主義で会計処理を行う必要があります。
なお、発生主義による会計処理を行うためには、複式簿記の知識が不可欠になります。