◆事前確定届出給与とは
法人税法では、利益調整を排除する観点から、役員給与の内、原則、定期同額の給与以外は損金算入が認められていません。
しかし、非上場会社等にあっては、臨時的な給与であっても、「所定の時期に確定額を支給する旨の定め」を税務署に届け出ることによって、その届出に従った支給額は損金算入ができます。この役員給与が事前確定届出給与です。
◆届出どおり支給されなかった場合
例えば、9月決算法人で、X0年12月に300万円、XⅠ年6月に300万円を支給する旨の届出を提出しておきながら、6月分につき、業績悪化等の理由以外で100万円のみ支給となった場合、損金不算入となる金額はどう判定されるかです。
この争点につき、同種の裁判ですが、届出と異なる6月分の支給のみならず所定どおり支給した12月分の300万円までもが損金にならないと判示しています。
理由は、役員の職務執行期間は株主総会の翌日から翌年の株主総会までであり、その職務執行期間の全期間を一個の単位として判定すべきであり、当該期間において支給されたすべてが定めどおりに支給されていなければならないとするものです。
◆職務執行期間が同じでも異なる取扱い
上記事案のケースを3月決算法人で解説している国税庁の質疑事例集では、6月分は翌事業年度のものであり当該支給額のみが損金不算入であり、12月の支給額は定めどおり支給しているので損金算入となる、というものです。
このようは国税庁の解釈では、同じ職務執行期間であっても事業年度が異なることによって、課税上、不合理な取り扱を受けることになり、また、裁判所がいう、役員の職務執行期間を一個の単位として判定するのであれば、事業年度が異なろうが本来同じ取扱いをしなければ、公平な課税関係を導くことができません。
◆事業年度単位か職務執行期間単位か
法律は、「その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与」と規定しているにすぎず、また、法律には「職務執行期間」という規定はありません。従って、届出どおり支給したものまで損金不算入することの合理的理由は見当たりません。
さらに、役員給与でも定期同額は事業年度単位で、一方、事前確定届出給与は職務執行期間単位で判定、これでは整合性に欠ける取扱いと思料します。