自動車の自損事故で死亡した男性が加入していた人身傷害補償保険金の請求権が、相続財産に含まれるか否かが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷はこのほど、「相続財産に含まれる」とする判断を示し、火災保険会社側の上告を棄却。同社に約2,200万円の支払いを命じた一審判決と、それを支持した二審判決が確定しました。裁判官5人の全員一致による結論。
判決などによると、建設会社の代表取締役だった男性は2019年に総合自動車保険を契約。男性(被保険者)は保険契約中の20年1月、被保険車両を運転中に自損事故を起こして死亡しましたが、男性の子らがいずれも相続放棄したため、男性の母親が単独で遺産相続しました。
母親は保険金を請求しましたが、契約では保険金請求権者について「被保険者が死亡した場合は、その法定相続人とする」と規定していたため、損保側は「死亡保険金の請求権は、被保険者の第1順位の法定相続人である(男性の)子らに原始的に帰属し、被保険者の相続財産には属しない」などと主張。「請求権は、男性の相続財産には含まれない」として、母親の求めに応じていませんでした。
母親は、相続人として保険金3千万円の支払いを求めて提訴。しかし一審係属中の22年9月に死亡しました。このため男性の兄ら2人が各1,500万円の請求権を承継し、母親の裁判を引き継いでいました。
最高裁第1小法廷は、「保険金は被った損害によって生じた不足分への支払いが目的」だと指摘したうえで、「保険金の請求権は被保険者に発生し、相続財産に属すると解するのが相当」と結論付け、「請求権は相続財産に含まれる」との判断を示しました。今後、同様の商品を取り扱う損保各社の保険金支払い判断にも影響を及ぼす可能性がありそうです。
<情報提供:エヌピー通信社>















