高額療養費制度の見直しをめぐり、政府の方針・対応が二転三転する大混乱が生じています。石破茂首相は3月、医療費が高額になった場合に患者の負担を抑える高額療養費制度について、今年8月からの自己負担上限額の引き上げを見合わせると表明しました。「本年8月の改定を含めて見直し全体について実施を見合わせる決断をした」と述べたもの。「見直しを見合わせる」という、なんとも歯切れの悪い発言で、「決断した」とはいうものの、「いずれ見直したい」という本音が見え隠れする表現だといえます。
この問題をめぐっては、まず、当初の案を見直して「一部は据え置く」、次には「予定通り実施し、来年以降は再検討」、そして今回「全体の実施を見合わせる」と、石破政権は前代未聞の方針転換を繰り返したことになります。
政府が右往左往した背景には、夏の参院選を控え、世論の理解を得られないとする自民党内からの圧力に対し、党内基盤が脆弱な首相が抗い切れなかったという事情があります。
政府は当初、今年8月から2027年8月にかけて3段階で、年収や年齢ごとに設定されている負担上限額を引き上げていく方針を打ち出していました。
厚生労働省では、この見直しによって削減できる医療費を5,330億円と見込み、そのうち2,270億円は受診抑制によるものと試算していました。つまり、重い病気で苦しんでいても、治療を諦める患者が増えることで医療費が削減されると見込んでいたわけです。
<情報提供:エヌピー通信社>