国税庁が公表した2023事務年度(23年7月~24年6月)の「相続税の調査事績の概要」によると、「実地調査」と「簡易な接触」を合わせた調査件数は前年度比17.8%増の2万7,337件でした。法人税や所得税の調査と同様に件数の変動が顕著なのが「簡易な接触」で、前年度比25.2%増、コロナ禍前の18年度と比べると81.8%増となっています。
23年度の相続税の「実地調査」は8,556件で、前年度の8,196件から4.4%増となりました。文書や電話、来署依頼などに基づき納税者と接触を図る「簡易な接触」は1万8,781件で前年度の1万5,004件から25.2%増え、実地調査の伸び率を大幅に上回りました。コロナ禍前の18年度の事績と比べると、調査手法が様変わりしている実態がみてとれます。18年度の「実地調査」は1万2,463件だったため、23年度の件数はそれよりも31.3%減少しています。その一方で「簡易な接触」は18年度の1万332件と比べ8割以上増加している状況です。18年度当時は実地調査の件数が、簡易な接触の件数を上回っていたわけです。
23年度は実地調査の件数に比べ、2.2倍もの簡易な接触が実施されている状況で、国税当局の〝武器〟として完全に定着したことがうかがえます。
1万8,781件の簡易な接触によって、申告漏れなどの非違が5,079件発覚しています。申告漏れ課税価額は954億円、追徴税額は122億円で、いずれも簡易な接触の事績の公表をはじめた16年度以降で最高額となっています。
<情報提供:エヌピー通信社>