エヌピー通信社:所得税・個人消費税の最新不正事例

 国税庁がさきごろ公表した2023事務年度の「所得税及び消費税調査等の状況」には、税務調査の傾向が数字として列挙されているとともに、具体的な事例についても紹介されています。これは、国税当局が類似の不正に目を光らせているという〝警告〟でもあります。

 国税当局は日本法人の会長と外国法人の役員を兼任していたAの国外取引に疑問を抱きました。調査の結果、外国法人には会社としての実体がなく、配当を受け取るだけのペーパーカンパニーであることが判明。さらに別の外国法人を経由してAは「コンサルティング料」を受け取っていました。本来、外国法人の収益からその国の法人税を差し引いた額にAの出資割合を乗じた金額が雑所得として発生するため、それに応じた金額を納税する必要がありました。さらに受け取ったコンサルティング料は当然に申告が不可欠でした。

 次の事例です。化粧品等の輸出販売業者として消費税の還付申告書を提出していたBは、国外送金等調書から免税売上額に見合う国外からの送金事実が確認できなかったこと、また申告事績等の分析から資金の出所や在庫管理状況等の事業実態を解明する必要があることから、国税当局に調査対象に選ばれました。その結果、売上先である外国法人は商業登記や会社登記などに該当する登録がなく、実在しない法人であることが発覚。反面調査の対象となった仕入先によると、Bの依頼で輸出販売にかかる免税売上に対する課税仕入があるかのように装うため、架空の仕入請求書を作成して報酬を受け取っていたそうです。

 最後に、国税当局は部内資料をもとに、金地金の取り引きを行っているにもかかわらず譲渡所得の申告がなかったCを調査対象に選定した事例です。調査を進めていくと、複数の金地金取引事業者からのCの口座への入金を把握。Cに説明を求めたところ、金地金取引事業者から「法定調書の提出基準以下の売却額であれば、税務署へ通知されない」という仕組みを聞き、納税を免れるために意図的に販売量を調整して売却し、当該譲渡所得を申告しなかった事実を認めました。
<情報提供:エヌピー通信社>