医療費控除の基本は、支払った医療費から10万円を差し引いた金額を所得控除するというものです。1年分の医療費を基に計算するので、年末が近づいたいまは医療費控除について考えるタイミングと言えます。
所得控除の額は、保険金などによる金銭的な補てんがあるなら、その分を減らす必要があります。この金銭的な補てんに関する税務処理について、出産を例に考えてみましょう。
出産した人には健康保険から「出産育児一時金」として50万円が支給されます。出産費用がこの50万円を上回るなら、「出産費用-50万円」と他の医療費の額の合計が10万円を超える時に控除対象となります。反対に50万円を下回るなら、「出産費用」は医療費控除の対象にできません。
ここで覚えておきたいのは、あくまで50万円を差し引くのは「出産費用」である点。どういうことかというと、出産費用と出産育児一時金50万円の差額を、他の医療費を計算するときにまで考慮する必要はありません。例えば出産費用が30万円、その他の病気の療養費が20万円かかったケースでは、出産費用と出産育児一時金との差額20万円を療養費20万円から差し引く必要はないということになります。つまり、この年の確定申告では、「療養費20万円-医療費控除の非課税枠10万円=10万円」を所得から控除できるというわけです。
<情報提供:エヌピー通信社>