エヌピー通信社:令和5年度の査察 告発101件

 国税庁はこのほど、令和5年度の「査察」「訴訟」「審査請求」「再調査」の概要を公表しました。「査察」によって検察庁へ告発した件数は101件で、脱税総額(告発分)は89億3,100万円に上りました。査察事案で年度中に下された一審判決は83件。そのすべてが有罪判決で、9人に実刑判決が言い渡されています。告発事案の〝有罪率〟が100%である一方、納税者側の〝勝率〟は「訴訟」で7.6%、「審査請求」で9.7%、「再審査」では6.5%にとどまり、裁判所・国税不服審判所・税務署、いずれの手続き・段階でも1割に満たないものでした。

 査察についてみていくと、着手した件数は154件、処理件数は151件で、査察事案全体の脱税総額は119億8千万円。このうち検察庁へ告発した件数は101件で、告発率は66.9%でした。告発分の脱税総額は89億3,100万円、1件当たりの脱税額は8,800万円となっています。消費税事案としては27件を告発。消費税の不正受還付事案としては16件を告発しました。

 具体例としては同一の高級腕時計のシリアルナンバーや不正に入手したパスポートの写しを用いて書類を偽造することで架空の課税仕入れや架空の輸出免税売上を計上していた事案を紹介。そのほか、輸出物品販売場の許可を受けたコンビニで虚偽のパスポート情報を用いて免税商品を販売したと装い架空の輸出免税売上を計上して不正に消費税の還付を受けた事案や、虚偽の不動産売買契約書を作成して不正加担法人から航空機格納庫を購入したと装い架空の課税仕入れを計上して消費税の還付を受けようとした事案、不正加担法人からキャッシュレス決済端末を仕入れたと装い架空の課税仕入れを計上するとともに資金を循環させて架空の輸出免税売上を計上し消費税の還付を受けていた事案などを、主な事例として挙げています。
<情報提供:エヌピー通信社>