自社株を後継者に贈与・相続する際の税負担を実質ゼロにする「事業承継税制」の特例について、政府が延長を検討することが分かりました。経営者の高齢化に対応し、円滑な承継を後押しするのが狙い。現行制度では、特例の適用を受けるための申請期限は来年3月末になっています。
事業承継税制の特例は、2018年度税制改正で時限措置として新設されました。従来の同税制では、自社株を相続によって引き継いだときに税負担が免除されるのは株式の3分の2のさらに8割にとどまっていたところを、特例では株式の全てについて納税猶予を認め、事業を続ける限りは税負担がゼロになりました。またそれまでは税優遇を利用できるのは現社長から後継者1人に対する自社株の引き継ぎのみでしたが、特例では最大3人まで後継者を選ぶことができ、現社長以外からの株の引き継ぎについても対象となるなど、使い勝手が向上しました。それまで同税制の申請件数は年間400件程度でしたが、特例で年間6千件まで増加しています。
現行の特例措置は27年末までの自社株引き継ぎが対象で、その前提として特例承継計画を作成して24年3月末までに提出する必要があります。経産省は計画提出までの期限が1年を切ったことを受け、今夏の税制改正要望で、期限延長を求める方針。具体的な延長幅は、年末にかけて行われる与党内での改正論議で詰めるそうです。
事業承継税制の特例については、創設当時の18年に宮沢洋一自民党税制調査会長が、「期限があるからこそ大胆なことができる。特例の期限を延長することはない」と発言したことがあります。
<情報提供:エヌピー通信社>