日本税理士会連合会は6月に開催した理事会で、2024年度税制改正に関する建議書を決定しました。建議書では特に強く主張する項目として、①中小企業の役員報酬税制と配当税制の見直し、②軽減税率の廃止と消費税の非課税取引の範囲見直し、③人的控除改革――の3点を掲げました。インボイス制度に対する提言は一段落させた一方で、複数税率の存在意義に切り込みました。
特に強く主張する「重要建議項目」としてまず挙げられているのが、中小企業の役員報酬に関する税制の見直し。損金にできない報酬の条件を規定した上で、不相当に高額なものを除いては原則として損金算入可とすべきとしました。併せて中小法人が株主に行う配当についても、申告分離制度の導入や配当控除の引き上げを求めています。
また軽減税率について「低所得者への逆進性対策としては非効率」「社会保障と税の一体改革」という当初の目的から乖離して歳入を毀損している」と批判。その補てんのために標準税率のさらなる引き上げや社会保障給付の抑制を余儀なくされていることや、区分経理等により事業者の事務負担が増加していることを挙げ、早期の単一税率制度への回帰を訴えました。消費税の逆進性の緩和対策としてはマイナンバーを利用した簡素な給付措置を導入するなど社会保障制度全体の中で解決することが適切だとしています。また現在「社会政策的な配慮に基づくもの」として消費税がかからない非課税取引とされているものについて、範囲の見直しや計算を平易にすることを求めています。
重要建議項目の三つ目では、前年から引き続き、基礎控除や配偶者控除などの基礎的な人的控除の見直しを求めました。給与所得控除や公的年金等控除の水準が過大であるとして、控除を縮減した上で基礎控除を一層引き上げるよう訴えています。特に公的年金等控除については「可能な限り縮減すべきである」と強い口調で控除縮小を要望しています。
その他、インボイスの負担軽減策のさらなる措置や医療費控除の廃止を含めた縮減、中小企業の減価償却方法の定率法の復活、相続税の連帯納付義務の廃止など、様々な税目で要望を行っています。
<情報提供:エヌピー通信社>