ふるさと納税に反対する見解を東京都がこのほどまとめ、都主税局のホームページに掲載しました。それによれば、同制度による都の減収額は年間571億円に上り、特別養護老人ホーム60施設分の補助額に相当するそうです。
ふるさと納税は、故郷やお世話になった土地を応援できる制度として2008年にスタートしました。ただ寄付を受ける地方の自治体にとっては収入増の手段となる一方で、寄付者が集まる都市部では税収減が深刻な問題ともなっていて、制度に反対する自治体も少なくありません。東京都がこのほどまとめた見解では、制度の問題点として4つのポイントを指摘しました。
1つ目は、同制度が多くの寄付金を集めるための返礼品競争となっていて、ふるさとや応援したい自治体に寄付をするという制度の本来の趣旨からかけ離れているという点。
2つ目は、自治体が住民サービスを提供するために必要な経費を住民税で賄うという地方税の原則に反しているというものです。都は住民サービスと住民税における「受益と負担という地方税の原則に照らしても適当ではありません」と批判しました。
3つ目は、高所得者ほど制度の恩恵を受けられるという点。ふるさと納税では、収入金額によって税優遇を受けられる上限額が変わるため、自己負担が同額でも受け取れる返礼品は高所得者ほど豪華になります。都によれば収入500万円の人の実質的な節税額が6,400円にとどまる一方、収入2千万円の人では15万8,800円に上るとして、「公平性の観点から問題がある」と指摘しました。
4つ目は、確定申告を不要とする「ワンストップ制度」によって、国税である所得税の減収が地方税に転嫁されているという点。ふるさと納税では原則として寄付分を所得税額から差し引き、引ききれなかった分を住民税から差し引くこととなっています。しかし「ワンストップ特例」を使うと税額控除がすべて住民税に適用されるため、「本来、国税である所得税の減収となるべき額が、地域の住民サービスに使われるべき住民税の減収となってしまいます」として、制度のいびつさを批判しました。
<情報提供:エヌピー通信社>